<ONE 輝く季節へとは>
恐らく初の泣きゲームと言われています。
・超常現象で主人公の存在が世界から抹消される
・普通なら誰も主人公の事を覚えていないのだけれど、強い絆で結ばれたヒロインだけは覚えている。
・更に、主人公の存在が抹消されてもヒロインは覚えていられるかが試される
そんな超常現象を含んだ設定ですがこの話のもう一つの特色は・・・
<主人公がギャルゲーの主人公してねぇ!>
そりゃ、家族がいないとか幼なじみが起こしに来るとかギャルゲーの主人公にありがちな環境ではあります…
でも…、コイツ実に積極的、行動力・決断力に優れて状況に面白すぎる対応をします。
普段は馬鹿やってる癖して…どうしていざと言うときに頼れる奴なんでしょうかコイツは…。
みさきルート
・盲目の人に年賀状をわざわざ盲人用の字を調べて書く。
・「断る」とあらかじめ言われているのに告白する
茜ルート
・「それから、茜。お前はふられたんだ…」と言う
普通にストレートに言うと嫌われること間違いなしのそのセリフも
ぶっちゃけ有り得ない洞察力と合わせてそのタイミングでで言われたら本気で祝福したくなります。
馬鹿をやって相手の気を引き
困ったところに強引に手を差し伸べて助け
別れる時に、ヒロインを悲しませないよう努力しながら結局ばれる…
別れに至るまでのギャルゲーらしからぬ姿勢は切なく涙を誘い、十分感銘を受けるに値します。
…こいつが幸福な家庭に生まれていたら考えるだけで恐ろしい…
<メインのルートは外れがない>
瑞佳ルート
展開は標準的ですが、展開設定が巧み。
もし責められるものがあるとすれば、大切なものに気付けない、自分自身の幼稚さだ。
等を含む永遠の世界でのやりとりは良かった。
茜ルート
この里村茜というキャラ、ツンデレのカテゴリーに当てはまりにくいんですが素晴らしいキャラしてます。
その衝撃は約五年の時が過ぎた最近、「ツンデレ大全」の中にノミネートされるほど。
別れのシーン演出とか
上品かつ物静かなようで飛びぬけた趣向をしており不覚にもキャラ自体に感銘を受けてしまった…誤解を避けずに表現するなら萌えてしまった…。
みさきルート
川名みさき…、多少都合が良すぎる盲目の人ですが、まあ許容範囲でしょう。
体のハンデを克服するとか、それでなお明るく普通でない大食性質を持っているとかは…ええい萌えてしまうではないか、何という不覚!
この人めちゃくちゃ強いです。ええ、いろんな意味で…
最も感銘を受けたのは、「何気ない一言が生きる勇気を与えた」お話
<作者の工夫不足が否めません>
惜しむらくは、全編を通して著者の技量が作品に追いついていない事
一例
「わがままで、自分勝手で子供っぽくて、人のことなんて全然考えてなくて」
茜の別れのシーンのこのセリフ、原作ゲームでは(未プレイですがここだけ我が友に見せてもらいました)
「わがままで――――――」
「自分勝手で――――――」
と言うように空けているのです、この空きがないのは大幅減点対象。
更に、みさきルートの別れのシーンもあっさりしすぎてて感動が三分の一に減退したと思われます。
普段の描写ももっと言葉を選ぶべきかと…茜視点で「クラスの悪ガキ連中」「体育会系パワーの弁当」などという言葉を使うのは大切な雰囲気を壊してしまいます。
雰囲気がここまで壊れているのに感銘を与えられたのは著者の技量ではなく、
素材の出来なだけに非常に惜しい。
でも要所では感銘を与えられる時点で及第点なんですけどね。
<実は初のこっち系ゲームの経験がこれ……>
絵はアレですがこの時点ではあからさまで安直な精神障害的キャラクターが存在していないので
この当時としては破格の出来かと…
18禁ゲームに飽きてきたころこれを読むと原点回帰になるのも良し。
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