紅薔薇さまは不機嫌?



世界史の授業は普段の三年菊組の教室ではなく、三年生の中から世界史選択の生徒が集めらた教室で学ぶ事になっている。


ようやく慣れた三年菊組の生徒達と違う少女達に戸惑ったけれど、授業が始まってしまえば他の授業と要領は同じ。

他の科目と同じように前の学校より授業スピードが遅いので余裕ができてくれた。


だから、授業を聞きながら今日の放課後行われる予定の整理作業の手順について紙に書いていく。



昨日、頼んできた蟹名静さんの言葉が思い出される。


「私達はどのように分別すればうまく使えるかの知識が決定的に不足しているわ。
 だから瑞穂さんのいた学校は願ってもない判断材料なの。
 どんな風に分ければいいかの手順を書いてきてもらえるかしら…」


責任重大である。
教科別に分けるのは当然として、古い役に立ちそうもないものは別のところへ移さないといけないし…。

一つ一つ読みながら特長を分類するしかなさそうだが…、それができる人はこのリリアンに何人いるのだろうか。

それに、聞いた所によると薔薇さま方の物だった参考書を除外するのに図書委員達は抵抗があるらしい。
そこの所をどうするか・






そんな事を考えながら昨日の夜に書いた考えをまとめているうちに授業が終わった。

すると、隣から特徴のある生徒に呼びかけられる。


「あなたが宮小路瑞穂さんかしら?」

見れば腰まで届く美しい黒髪・鋭い美しさ・凛とした立ち振る舞い、紫苑さんと共通点が多いものの紫苑さんに似ていない生徒が見つめてきていた。


「はい、そうですが、あなたは…?」

まずい…質問が気に障ったのか一瞬美しい眉がつりあがったように見えた…。
見間違いにしたいけど、見間違いではない。



「そう、栞から聞いてないのね。
 私は小笠原祥子、山百合会の紅薔薇さま(ロサ・キネンシス)を務めているの。よろしく」

と名乗ってきた。

しまった…紅薔薇さまと呼ばれ慕われる立場の人に対して『あんた誰?』と聞くリリアンの生徒なんて…。
例を挙げるならタイを直されて一言も礼を言わない下級生みたいに失礼なのに。

「紅薔薇さまでしたか、失礼しました」
「謝る必要はありません、知らなくて当然なのですから。
 それにしても、噂では進学校からいらっしゃったとか…なぜ世界史を?」

「そうですね、強いて言うならば、時間軸の旋律に惹かれたからでしょうか?」
「時間軸の旋律?」

「はい、年代順に起こる出来事をだけ考えられるほど歴史は単純ではありません。
 同じ時代に世界の各地で同時に行われている事が複雑にからみ合うことで、音楽のような調和を生み出しているような物…それが時間軸の旋律と呼んでいます。
 物事を覚えるのではなく、音を聞いているような感じが魅力的だったからです」

小笠原祥子さんは予想外の答えでも聞いたかのように固まってしまった。
そんなに驚く所だろうか?


「…さすがに…編入試験を一位で潜り抜けてきた方は余裕があるわね」
あと、言葉にやけに棘を感じるのはなぜだろう。

「そ…そんな事は…」
「とぼける気かしら?
 あなたが学年でトップの成績だという事はもう、知らない人はいないのよ。
 それでどんな素晴らしい方なのかと期待して観察してみれば…
 そんな風に授業中に全く関係のない事をする余裕さえあるのね」

目の前の薔薇さまは笑顔さえ浮かべてこちらを威圧しながら。
上品に手のひらを上に向けて示してきたのはさっき書いていた図書室の整理作業の手順。


しまった、俗に言う「内職」という授業に関係のない行為は薔薇さまにとって見過ごせない行為だったらしい。




「歓迎会でまた会いましょう…それではごきげんよう…」

そして反論する間もなくそんな言葉を残し、凛々しい振る舞いもそのままに紅薔薇さまは去っていってしまった。




どうしよう…いきなり初対面で誤解されてしまった。


しかし、亡くなった祖父も言っていた。
他人の非難をやめさせるのではなく、くつがえすために生きよと。


誤解は整理作業の成果を示す事で解くことにしよう。








あとがき

小笠原祥子さま、厳島貴子の負の財産を継承するの巻。

原作では厳島貴子の役なのですが、彼女の生徒会長の面を小笠原祥子さまが担当しなければならないので成り行き上仕方なく…

しかし、桜で不機嫌な上に、御門まりやという天敵の従姉妹というだけでツンツンしすぎのような気がする…。

もっとこう…祥子さまはエレガントでないといけないのに…


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