奇怪な伝言


「瑞穂さま…どうして…?」

図書準備室を出るなり、図書室で調べ物をしていた紅薔薇のつぼみ…福沢祐巳ちゃんにそんな声をかけられてしまった。



蟹名さんの話す真相を聞いた後、心が落ち着くのを待って図書準備室を出たのだけれど、今の瑞穂はまだ普通には見えないらしい。

全校生徒のお姉さまたるエトワールスールとして悪い例を示すわけにはいかないのに…



「瑞穂さま…先程あの扉から図書室を出られたのにどうして、図書準備室から出てくるのです?」

どういうことだろう?
蟹名さんと栞さんが図書準備室を出てからずいぶん時間がたっている。
それに、今日福沢祐巳ちゃんとは顔を合わせていない。



「もしかして…これが図書室のミステリーなのですか?」

福沢祐巳ちゃんの側にいた周坊院奏ちゃんも驚いている。
何か…認識がずれているようだけれど…




「私はこの卒業アルバムを探し出すために図書準備室にこもっていたのだけれど…」

蟹名さんから渡された卒業アルバム、そこには自分と同じ姿をした女性の写真が載っている。


「そんな…瑞穂さまはついさっきまで私達にミステリーの話をしていたじゃないですか?」
「はいなのです。
 ミステリー6番、寮の開かずの部屋の真相を聞かせてくれたのです」

まさか…



「私が話したの?私と同じ姿をした人が…何を?」

「奏が知らない話でした…高根一子という生徒が十数年前にエルダーのお姉さまを慕って、●●●号室でお亡くなりになられたと…」


宮小路瑞穂は…そんな事知らないし…言ってない。



「そういえばさっきの人、『宮小路瑞穂に今は私が部屋の主だって伝えてね』って…おっしゃってましたけど…」

もう間違いない、手に持っている卒業アルバムに載っている人の仕業だろう。

やってくれる…。
こんな形で存在をほのめかしてくるなんて。



「そう…きっとあなた達はミステリー2番に遭遇したのよ。
 お願いだからこの事は誰にも言わないでね…本当の事は後で説明してあげるから」




『私が部屋の主だって伝えて』


その言葉の意味する所は、とても重要になりそうだった。





あとがき
ついに本性を現したあの人。
遭遇するまであと少し。



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